そらち★ヤマの記憶だより

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「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産へ

2015/05/05 [Tue]21:40
category: 炭鉄港−北の近代三都物語
ゴールデンウィークも終盤。みなさん、いかがお過ごしでしょうか?
今日のブログは、わたくし、りじちょーが担当します。

昨日の夜のテレビニュース速報で、今朝の新聞一面で、みなさんもご覧になったかと思います。今日19時のNHK全国ニュースでは、トッブ項目でした。
ユネスコの世界遺産に登録申請中だった「明治日本の産業革命遺産」
候補を事前審査する諮問組織のイコモスが、「登録」を勧告したというニュースが飛び込んできました。

正式に世界遺産に登録されるかどうかは、6月28日からドイツ・ボンで開催されるユネスコの世界遺産委員会で決定されます(実際に議題にかかるのは7月3日頃になりそうとのこと…)が、名称変更以外は条件が付いておらず、選挙で言うと「当確」の赤ランプがついたと言っても良さそうです。
サブタイトルは「九州・山口と関連地域」だったのが、「製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」へ変更となる見通しです。実は、このサブタイトル変更は北海道として結構重要な点で、後々いろいろと…。

日本の産業系世界遺産としては、2007年の石見銀山(島根県)、昨年の富岡製糸場(群馬県)に続いて、3件めとなります。
先の2カ所と「明治日本の産業革命遺産」が大きく違うのは、広域で複数の資産を一括して登録する「シリアルノミネーション」であること。そのため構成資産は、九州・山口を中心に8県23資産にわたっています。

そのうちの幾つかをご紹介しましょう。
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●鹿児島市「旧集成館」
鹿児島_尚古集成館
まず筆頭にくるのは、島津斉彬によって始められた、海外技術を導入した日本初の洋式工場群を形成した集成館事業の遺構。扱った産業技術は製鉄・紡績・火薬・ガス・造船など多岐にわたり、まさに「明治日本の産業革命遺産」ストーリーのスタート地点となった場所です。(株)島津興業によって尚古集成館というミュージアムとして公開されています。隣接して、大名庭園の仙厳園(磯庭園)があり、鹿児島市を代表する観光スポットにあります。
この島津斉彬によってスタートというところがミソで、これまた北海道として結構重要な点で、後々いろいろと…。

●長崎市「端島炭鉱」
長崎_端島
今回の構成資産の中でのハイライトとも言える「端島」です。一般的に島の形からきた通称「軍艦島」の方が知られていますが、炭鉱の名前(三菱端島鉱)も、元島民の方々の気持ちとしても、我々同じ炭鉱仲間としても「端島」の方がしっくりきます。
世界遺産になるのだから、あの巨大高層住宅群が自動的に残されるのだろうと思うのは早計のようです。というのも、今回は「産業革命遺産」なので生産部門のストーリーがメインであって、住宅は脇役扱い。安倍総理の地元の松下村塾が入っているのに、この圧倒的迫力と初コンクリート高層住宅という意義のある端島炭住群の手当がキチンされないようでは画竜点睛を欠くことにもなりかねず、今後の展開に注目しましょう。

●大牟田市・荒尾市「三池炭鉱」
荒尾_万田坑
△熊本県荒尾市にある三井三池鉱の万田坑
大牟田_宮原坑と三池専用鉄道
△福岡県大牟田市にある三井三池鉱の宮原坑と三池専用鉄道跡(写真右側の窪地ライン)
日本を代表する大炭鉱ですから、当然構成資産の一つとなっています。立坑もさることながら、注目すべきは三池専用鉄道の跡地も構成資産に入っているということ。何も残ってなくても、そこにあったという事実、そして価値とストーリーが重要なのです。
三池専用鉄道は、当初馬車鉄道でスタートし鉄道開業は1891年。私の故郷・幌内炭鉱の石炭運搬のための幌内鉄道は1880年手宮(小樽)〜札幌部分開通、1882年幌内まで全通。こっちは最初から本格的な産業鉄道で、手宮・幌内の両端部ともレール残ってますし、クロフォードが直輸入した鉄橋まで残ってます。
宮原坑は1901年、万田坑は1908年。ちなみに北海道最古の立坑は、三笠市の北炭幾春別鉱錦立坑で1919年です。

●佐賀市「三重津海軍所跡」
佐賀_三重津海軍所
もっとすごいのがここです。河川整備で作ったらしい「何ちゃって蒸気船もどき」が置かれている以外は、何もない。出土品が続々出てきた場所だそうですが、世界遺産という名前だけに惹かれて訪れた人には、チョッと厳しそう。これだったら北海道の方が…。
隣りにある日本赤十字の創始者である佐野常民記念館が見応えありですし、近くには昭和のものですが旧国鉄佐賀線の筑後川昇開橋(福岡県大川市と佐賀県佐賀市との間)が動態保存されこちらも大満足ですので、佐賀に行かれる際はセットで見ることをお勧めします。ただ、世界遺産のストーリーからは、ドンドン離れていってしまいますが…。

●長崎市「三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン」
長崎_三菱クレーン
今回の世界遺産登録は、文化庁ではなく内閣官房が所管したのも大きな特徴です。それは、このクレーンのような現役で使用している資産が含まれているから。文化庁がやると世界遺産なのだから当然、国宝だの重要文化財だの文化財指定をキッチリして…ということになりますが、日常業務で修繕しながら使っている民間企業からすると、ボルト一本抜くにも許可がいるようでは仕事にならず、まっぴらゴメンということになってしまいます。そこで内閣官房の登場となりました。
何せ現役資産なので、特別な公開以外は、陸からか海からか工場敷地外から眺めるしかありません。
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いずれにしても、世界遺産というビッグネームによって産業遺産が注目される状況が出現しつつあることは、北海道で炭鉱遺産の活動をしている我々にとっても嬉しい限りです。
また、単なる施設を文化財として残すということにではなく、一連のストーリーに価値が見出されたということも、大きな励みになります。

ただ、今回の構成資産を見ると、範囲も岩手県から鹿児島県まで1,000kmを超え、複数のストリーが並列的に進んでいて、チョッとわかりにくいことも事実です。
その点、北海道の炭鉄港(空知の石炭、室蘭の鉄、小樽の港、それらを結ぶ鉄道)は、スタートが薩摩の島津斉彬と同じですが、その後の展開は空知の石炭を軸に小樽の港が栄え室蘭に鉄鋼業が興ったと単純明快、距離も100kmそこそこで、わずか30年で炭鉱開発(幌内炭鉱)から製鉄所(輪西製鉄=現在の新日鐵住金室蘭)までやっちゃったというスピード感があり、今回の世界遺産と同様のものがゴロゴロ残っています。世界遺産に足るのかどうかは別として、それと同等に近いものを扱っていることを誇りとして、活動を進めて行きたいと思っています。

また、朝日新聞5/5朝刊の22面「解説」には、次のように書かれています。
城郭や寺院に比べて産業遺産は地味だ。すぐには観光や地域活性化に直結しないものもある。たとえ著しい経済効果がなくても地域の宝として後生に残していこうという姿勢が、地元自治体には求められるだろう。
北海道の自治体関係や、世界遺産になりさえすれば観光客がワンサカ来ると期待している観光関係の皆さんにも、是非読んでもらいたい内容です。石見銀山や、北海道では知床の例もあるように、世界遺産のブームは一過性のものです。そして、遺産を残すことが目的ではないはずです。
これら遺産を通じて、過去の経緯を踏まえて未来に向けての発信される何らかの糧が皆に共有されること、地域にとっては持続可能性を高めるための選択肢が広がることが本旨であるべきでしょう。今回の当確報道で、改めて産業遺産活動に携わるにあたっての、そんな気持ちを新たにしています。

ともかく、今回の世界遺産指定に向けて長く厳しい取り組みをされてこられた方々に、敬意を表するとともに感謝をし、まずは一旦、ともに喜びを噛みしめたいと思います。
北海道での似たようなストーリーと資産の話しについては、また後日、改めて書きたいと思います(続く…)。
 
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